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当面する私立中学・高校のマネジメントの諸問題出席者 大谷平人 恵泉女学園中学・高等学校事務長
K・O 某中・高・大学法人事務長
富本道宣 NPO理事(前理事長)・富本教育研究所
司 会 森上展安 NPO理事長・森上教育研究所
1.震災対応
森上 まず、今回の震災の影響について伺いたいのですが。那須海城さんが被災されて、東京で海城の校舎を借りてこの5月からおやりになるとのことですが、皆さんの学校では学校の運営に関わるようなことがあったかどうか、校舎の耐震性ができていない学校もあると思うんですが、それと緊急連絡システムの問題。連絡が取れなかったり、迎えに来てくれということにして親御さんが5時間くらいかけて…とか、さらに兄弟がいる場合は別の学校に迎えにということがあったりしたそうですが、震災で改めて出てきた問題点などはありましたか?
K・O うちは小・中・高とも都心部にありますが、ちょうど3月11日の午後2時46分だったこともあり、小学校は半分は帰宅していまして、途中で電車が止まったりした子どもはおりまして、うちは緊急用に小学生でも携帯電話を持たせているものですから、それで連絡がついてすぐ学校に戻らせるなり、親に連絡するからそこから動かないようになどという指示を出したりすることができました。
森上 小学生に携帯を持たせるというのは珍しいですね。そういう学校はあまりないんじゃないですか。
K・O あまりないと思います。
森上 中学生には普通持たせないから…、今回のことでは、持たせたほうが良かったと思いましたが。
K・O つながりにくかったということはありましたけどね。中高生はある学年が面談日だったのと部活動の生徒だけで少人数でしたので、通常の対応として何かあったら自分で(学校に)戻ってきなさいとしているので、電車が止まった生徒は戻ってくるなどしていました。小学生は最寄のJRの駅まで教員が行って確認しましたが。まあ、問題はありませんでした。
森上 あとは放射能の問題で、弁当を勝手に持っていってもいいかという問い合わせが寄せられた小学校があったそうですね。
K・O それはありました。水筒を持ってこさせるくらいならいいですが、うちは給食ですから、休ませるか…
森上 野菜はちゃんと洗ってあるのかとか、保護者からの厳しい追及があったところもあったようですね。
大谷 恵泉の中高はたまたま試験の後の自宅学習日だったんです。近隣や下北沢から避難してきた生徒など7名と遊びに来ていた卒業生2名と教員13名、職員8名、合計30名くらいが校舎に泊まりました。連絡システムについては、電話連絡網だけでは不十分ということで、1・2年前からHPに“緊急のお知らせ”を掲載して、各自が携帯電話も含めてアクセスできるようにしました。一斉メールについては管理上の難しさが問題になって今回も見送りました。さすがに緊急地震速報システムについては今度、導入を決めました。
K・O うちの学校も最終的には中高生が120人と小学生が30人くらい、教職員が中高が48人と小学校が15人くらい、職員が15名泊まりました。24時間体制で保護者が迎えに来たら渡すという対応をとりました。
森上 K・Oさんのところは校舎が頑丈そうですね。
K・O そうですね。あとからつけた壁のひびや塗装がはげたということはありましたが、ほかは大丈夫でした。
森上 今回のような地震で損壊したら、保険でなんとかなりますか?
富本 まず、地震保険に入っているかどうかですね。
森上 地震保険はコストが高いですよね。
富本 それが課題ですね。
大谷 恵泉は体育館の柱のコンクリートの一番上の部分が落ちたんです。生徒もいなかったし、床が少し傷ついたくらいですが、きちんと補修しようとしたところ250万位かかるんですね。地震保険には入っていませんでした。
富本 宮城県沖地震の体験を踏まえた宮城県の私立中高の対応リポートがありまして、ガリ版刷りで20ページくらいのものでしたが、その中で一番強調していたのが「交通機関は動かないという前提で生徒はまず校内に留めておけ」ということです。現役時代にそのレポートを読んで、担当教員に対してこういう原則らしいよということを言ってきました。生徒は広域通学をしていることから、確認がとれるまで動かさない方がいいよと。今回、どのような措置をとったかはわかりませんが。
森上 今回、各学校はどうだったんでしょう、断固校内に留めおけということだったんでしょうか。今度、東京湾地震も来るということですから(笑)。
K・O うちは毛布と水や宇宙食のような非常食を2食分は用意してあります。小学校は缶詰のパンなどもう少しいいものを(笑)おいてあるんですが、でもそれ以上の、これから真夏のことを考えますと水は500ml3本では足らないんじゃないかとか、うちはその分備蓄しているんですがそれ以上は倉庫に入りません。適正な量の判断というのは難しいですよね。
森上 青山学院(の大学)では暑くなる前に、6月いっぱいかあたまで授業を終えるそうですね。中高も同じかもしれませんが。
大谷 大学は電力使用量25%削減を要請されているそうでかなり真面目に、深刻に考えています。中高は夏の行事などはそこまで考えてはいないのですが、とりあえず教員も早く帰ろうというところです。
森上 学校はいいけど塾などはサマータイム制を導入するしかないかと考えているところもあるようですね。
K・O 春休みは朝やるなどとした塾はあったようですね。
森上 夜は早く切り上げようとか、シエスタを入れようとか…。夏期講習や補習のある学校はたいへんですね。多くの学校は夏期講座をやっていますよね。涼しいところに合宿するところはいいかもしれませんが。
K・O 今、地震が広域ですからどこに行ったらいいのかという問題もありますね。
大谷 今日はたまたま遠足日だったんです。中1生は例年、千葉県の富津海岸で潮干狩りをやっていたんですが、今年は埼玉県の森林公園にしました。そうしたら人がいなくて貸し切り状態だったそうです。バスガイドさんも44日ぶりの仕事だと言っていたそうです。想像以上に深刻な状況だと思いました。よその学校では遠足も自粛だったんでしょうか。
K・O 私どもでもG.W.の前に遠足があるんですが、バーベキューは中止にしました。放射能の影響を案じてということです。
2.学校の情報発信と情報共有
森上 では地震の話はこれくらいにしまして。中高の現場で起きている問題についてお話ができればと思うんですが。K・O先生はコンサルタントもやっていらっしゃったんですよね。ご自分で解決できてしまうかもわかりませんが。
K・O おもに経営関係ですね。労務問題、財政的な問題について。
森上 やはり現場でいろいろな問題が発生するわけですよね。
大谷 私はどちらかというと調整型といいますか、昔の竹下登首相みたいな…現場で走りまわって解決することばかりで、問題意識というものは…。ただ、中学・高校でスタートしまして、短期大学、大学へと異動して教務課長、庶務課長、入試広報室長などと動いてきて、それから中高一貫になって中高へ戻ってきました。その間にずっと職員会議や教授会、大学院の研究科委員会などにも陪席してきましたので、同じ法人内ながらも、それぞれの先生方を身近で見てきた経験値というのはあると思います。
森上 ひと通り回られた中で感じたことはありますか。
大谷 大学の教授会を見てきた眼で中高の職員会議を見ると、もうちょっと物事を広く見て欲しいと感じたことはありましたが。しかし中高の先生も一生懸命でいいところもありますし…。ただ、気になったのは教員採用について、大学の場合は投票によって採否を決めるということが教授会で行われているんですが、中高の場合はせっかく厳正な選考をしても理事会で決まるまで、何も情報を発信しないということがありまして、もう少しオープンにしてもいいかなという感じがします。採用は厳正ですから、あくまでも方法の問題なんですが。
森上 なかなか教員はものすごい競争率ですよね。
大谷 公募しますと教科・科目によっても違いますが、社会科ですと100倍、英語やその他の教科でも50倍などはザラですね。採用が1名ずつだからということもありますが。
富本 中高が大学に学ぶことのひとつとして、今言われた「情報の発信と情報の共有」ということはあると思います。
大谷 HP(の導入など)でも中高は大学に比べて10年遅れたかという感じがします。情報公開や発信の面でも。
森上 発信は(中高は)ほとんどないですね。発信というか更新というか。
大谷 問題なのは、何かやりたいと思っても、先生方も授業で忙しくてできないし、職員も10人たらずではカバーできないということです。職員の数が多くて大学のようにそれぞれスキルのある者がそろっていればいいんでしょうが。HPにしても入試広報についても、そういう意味で(大学に)遅れてしまうのかなという気がします。恵泉は世田谷に中高と法人本部がありますので、中高自体の職員は8人程度ですが、すぐとなりの法人本部では13人くらいいますので、人手不足というわけではないのですが。
3.事務長と業務について
富本 神奈川の事務長会は4月に総会があるのですが、今年は先ず県所管部局担当者の話、次に東工大の学長さんの講演、その後は場所を変えて懇親会がありました。だいたいこちらの方でみなさん本音が出てくるのですが(笑)。いずれにせよご退任、新任の事務長さんが、このところ増えましたね。事務長さんの入れ替わりが多い。大学系列は最近異動が増えた感じがします。
我々としては大学人から学ぶ点はありまして参考にさせていただくわけですが、初めて法人本部・大学から中高に赴任された事務長さんはご苦労が多いようですね。我々はいろいろな意味でできるだけバックアップする、そういう点で事務長会というのは役立っているのかなあという気はしています。中高は狭い世界ですから、教員とのお付き合いの仕方も大学とはまた別な意味で近いというか濃いというか、そういう部分でご苦労というか、戸惑われている部分はあるようです。
森上 最近、校長さんの交代も多いですね。
富本 そうです。
K・O 中高と大学の人事交流というのは今までそれほどなかったということですか?
富本 大学によって違いますが、以前はだいぶ少なかったように思いますね。最近は結構進んできているように感じます。
大谷 恵泉は中高・短大・大学とキャンパスが別々で、3つのキャンパス全部を経験したのは私が初めてなんですが、その後、多くの職員が異動で各キャンパスを経験しています。短大がなくなったので記録を破られることはもうないのですが(笑)。
森上 高速回転は、あれは幹部養成だそうですから。
富本 中高は職務の異動が少なくて、今回付け加えた資料にありますが、職務の異動をもっとした方がいいと思います。一身専属的な形で、同じポジションで30年いましたということになると、もう誰もそこにさわれない、本人が休むと開店休業になるのでは、これはやはりおかしい。これが、いまだに見受けられる風景です。
森上 大学も10年くらい前は同様の状態でしたが、大学がこのままではまずいということで変革された…。
富本 中高の事務職は人数が少ないから異動できないと最初から決めつけるけれども、それは違うと思います。もっと意識的に、主たる業務において予算決算が2人、給与・共済がらみが2人、納付金管理を含め学校事務関係が2人、それぞれこのうち1人を定期的に異動させる。予算と決算の担当者は一方が決算の主であれば、もう一人はサブでチェックをさせる、というような。少なくとも収入と支出を兼務させない。これに副たる業務を付加するわけです。
この構成のもとで、異動の際には必ず引き継ぎ書とマニュアルを作成し、引き継ぐ。更に12か月の定例的な仕事のスケジュール表を作らせて、どの時期にどの仕事があるのかわかるようにする。それで職場の人間関係が変わりましたね。「あいつはいい奴だ」の価値基準が仕事ベースに変わります。やはり異動をしないと育ちませんね。
大谷 異動させないとだめですね。やる気のある人のやる気がだんだん無くなってきますから。職務の異動も大事だと思います。
富本 職務の異動ということをもっと積極的に経営者が考えるべきだと思っています。人が育たないです。経験蓄積型でやってゆくと限度があって、自学自習の人ならいいですが、やはりばらつきがありますから。でも、ある仕事がだめでも次の仕事なら能力を発揮することもありますから。そこではじめて評価が的確にできるのではないでしょうか。
森上 以前、早稲田の事務長さんが勉強会でおっしゃっていて印象的だったのですが、大学法人だから一部にはいいスタッフがいると、法人が大きいから、そういう面でのメリットがあるとおっしゃっていました。なかなか中高だけの規模では人材面では、いい人はいるけれども常にいい人は採れないと、そういう面では大学まで含めた人材面での採りやすさがあるんじゃないかと。
富本 開成学園元事務長の大野さんがおっしゃっていたように企画以外の業務というのは、アウトソーシング化していくのが全体の流れでしょうね。コストの面でも、実際の仕事上の問題でも。外部の力を活用すれば事務長プラス6人いれば十分対応可能でしょう。いろいろな業者が出てきていますからその方たちに任せた方がはるかにコストが安いわけです。もっと専門家を利用する方が効率的です。就業規則も事務長さんが作るより、「餅は餅屋」に任せる。負担軽減ばかりでなく、質的にずいぶん違うわけですから。そういう形でその道のプロにお金を出すべきことは出す、任せるべきことは任せる、逆に内部でやらなければというところにこそ事務職が力を注ぐ。とにかく、同じポジションでずーっとやっていて、その人が鍵を閉めて帰ってしまうともう誰もさわれない、というところがいまだにあるのは悲しいですね。
森上 そういう意味でうまくいっていないというか、旧態依然の学校というのはどれくらいあるんでしょうか?
富本 異動させる学校が増えてきましたが、まだ全体の半分くらいでしょうね…。最近急速に伸びている学校さんというのは、たいてい仕事のローテーションを経営者がきちんと考えています。それから外部の専門家なりコンサルタントをうまく使って、中長期計画のなかでひとつひとつ布石を打つということをなさっています。K・Oさんのご専門が財務や労務というお話がありましたが、これからの経営の中核事項と思います。これまでは給与と決算のところが中高事務業務の花形のポジションだった。でも財務とは本実質的に違いますよね。財務体質の改善とか中長期的な納付金の改定計画だとか給与の体系をどうするかといった、総合的に考えなければならない。それは必然的に労務とリンクしてきます。この辺の発想がやや希薄なのかな。資金繰りというかお金のフロー部分を注目する学校がぼちぼち出てきました。流動資金がタイトになり資金繰りをやらざるをえなくなったのが一因でしょう。いろいろな意味で財務と労務という部分は更に重要になってくると思います。ただ、経営企画的な部分はとても重要だと思います。ある法人の理事長さんは「法人事務局」を「経営企画室」にした方が経営のニーズに応えるのではと提案されておられる。私自身の経験で感じていることは、周年事業で40億、50億のプロジェクトが急に出てきて、資金計画や事業内容がきっちりしてないケースがあり、このパターンは後日多大な借金返済に苦しむことになりかねない。経営破たんをきたした中高法人は、建築が遠因でつまづいているケースが多い。それは中長期的な視点で財務管理をきっちりやらなかったツケなんでしょうね。
K・O やはり、理事長が経営センスをお持ちでないと難しいですね、どうしても現場は教育ですから、現場の意見に流されてしまうと、経営は二の次になってしまいます。私学の場合も少子化の時代ですから、経営があって学校が成り立つので、にもかかわらずあまり経営の経験がある方がなられていないんじゃないか…。それから、私はいくつかの学校しか見ていませんが、理事長がワンマンでより力強くて、理事長・校長を兼務しているとか、そういう学校か、逆に民主的で何を決めるにも職員会議で決めるというような両極端…
森上 中間がないんですね。
K・O どちらも問題があると思っています。一番理想的なのは経営と教育が分離して、そこでお互いが意見を言い合って、しかし最終的には経営が優先されるというというふうにならないとこれからの私学はなかなか難しいと思います。最上位の学校は切羽詰まらなくても経営的にはあまり困らないと思いますが、それ以下はこれから公立人気が高まっていますから、私どもも今後の課題と捕らえています。
富本 事務職員育成の一つとして、現役時代に2週に1回ずつ、スタッフをスケジュールに沿って研修を実施しました。例えば、過去の理事長、校長、事務長の誰が何時、何をなさったのかを知らないわけです。少なくとも学校の歴史はきちんと知っておかなければ…年史に現れない歴史とでも申しましょうか。歴史の刻みを人と結びつけた形で定着していない。スキルの向上は当然として、基本的に歴史、年輪というものを自分たちも刻んでいるわけですが、過去にいろいろ刻んで下さった方たちの業績というものも、知っておくべきじゃないかと思います。しかし、教える人がいなくて、知るチャンスもない…。
K・O 研修をするということはなかったようですね。
大谷 幸いに恵泉は大学法人なものですから、大学職員が専任で40数人いるので、どうにか研修の機会を設けられるくらいになったかな、という感じのところで、確かに今まではなかったですね、なかなか。
K・O 中高のセミナーもあまりないですね。SDとか言って、大学ではアドミニストレータを作ろうとか…そういう学部もできましたしね。
森上 このNPOはアドミニストレータを作ろうというのが発足の趣旨ですが。
大谷 大学の方は大学行政管理学会という学会があるし、桜美林にもそういうコースがありますしね。それは私が大学にいた頃、15年くらい前に行政管理学会ができて、初期のメンバーは私もよく知っているんですが、最近は、こう言っては何ですが…立命館の研修の場みたいになっておりまして(笑)、立命館は職員が多いものですからどんどん職員を派遣して、そこで発表させて・・・。
あの学会も最初は課長以上の管理職中心で、手弁当でやろうという感じだったのですが、どんどん会員資格を緩めて誰でも加入できるようになりましたので、昔とはまた違っていて、そういう意味ではいい研修の場になっていると思うんですが。
富本 全国の事務長会組織できればいいですよね。ヨコのつながりが欲しいものです。九州は何と言っても福岡が中心で、福岡での研修会開催時には九州の他県にもご案内状を出されているようです。福岡を中心にして九州は一体というイメージです。京都、愛知、宮城県などの事務長会がしっかりしていますね。
K・O うちの学校の場合、前の事務長は文科省からとか、東京都からとかという方が多かったんですが、ほかの私学ではそういうことはないですか?
富本 銀行から来る方が、少なくとも神奈川あたりでは多いですね。
K・O そうすると企業の(経営)センスはあるわけですね。
富本 その人によりますがね(笑)
大谷 教員をやっていて事務長になったケースというのはまだたくさんありますか?
富本 ずいぶん減りましたね。大学法人で、大学や本部の問題事務職員を中高にまわして、そのせいで中高がガタガタになってしまったというケースはさすがに減ってきました。それから外部からの採用も、最近はそうとう厳しく選考する。「紹介されたからいい」というのではなくて、ご紹介であっても、複数の中から面接をして、その中から選択をする形ですね。
国際学校の事例ですが商社からの方が期待に応えているようです。確かに語学力という問題はありますが、それ以上に世界各国でいろいろな価値観の人々と商売をしてきたわけですから、学校の、ちょっと独特の価値観の中でも対応できるのでしょう。
森上 商社の人たちは自分が子供を(インターナショナル?)に入れて、自分ががみがみ言った覚えがあるから(笑)、そこのところはよくわかっているのでしょう。
K・O 保護者としての眼もあるわけですね。…さきほどの人事異動の話でも、小さいところでは小学校は専任の事務は一人しかいませんから、採用されてからずっとそこにいらっしゃるんです。だから、「ジョブローテーションをするぞ」と宣言したところで、その方を動かすことについては小学校の校長が首を縦には振りはしない。
富本 よくわかります(笑)。
4.人事と経営
大谷 今、大学の職員を公募すると大変な倍率で応募者があるんです。中高の教員もそうですが、中高教員はきちんと公募して模擬授業をやらせて採用する、それが非常勤講師であっても公募・模擬授業・委員会の採否という手続きを踏む。それくらいきちんとしているんですが、では職員採用はどうかというと、まだそこまでいっていません。ですが、一人採用すると40年間くらい雇用することになりますから、やはり採用の時にもう少し…あまり言うとさしさわりもあるかもしれませんが、教員採用にかける労力に比べるとまだまだ追いついていないというところがあって、もう少し職員採用に力をかけたいですね。
K・O 私がびっくりしたのは、事務職員は縁故採用がほとんどなんですよ。
大谷 そうですね。
森上 大学職員なんてものすごくいい給料じゃないですか。
K・O そうです。教員と大差ない、1割2割くらいの違いで。で、「どうやって入ったの」と聞くと全員が人間関係。この人が辞めたから「次の人はこれ」とかそういう関係で入った方々ですから…、昔の理事長の紹介などということになるとある意味アンタッチャブルみたいな人もいるんですよ。
富本 それがあるから変革がしにくいのですね。
K・O そうですね。守りだけですものね。
森上 この人に言うと変なところから横やりが入る、よくよく調べるとなるほどこういう関係があったのか(笑)、と。
富本 やはり公募をもっと広くすべきです。おっしゃる通り職員は30年、40年いるわけですから。で、能力的に意欲的に対応できなければ、お互いに不幸ですよね。
森上 そういう事例を私はたくさん見てきました、やはり公募主義(?)だと思いますね。かなり核心に触れたご発言で。これで今日はまとまりました…という感じで(笑)。
K・O だから、私はもう「縁故はとらない」と宣言したんですよ。
一同 えらいっ!
森上 就職試験に関して…
K・O 全くの選抜です。あとは教員採用についても本来、うちは組合が強いですから現場の教師に任せたくないですね、経営するのはこちらですから。経営陣が採用に口出しできなかったら、仲間をどんどん連れてこられたらどうにもならないわけです。
K・O 比較的、中高の場合は校長が最終決裁できるようなかたちで、現場の教科会で5人くらいに絞ってもいいけど、最終的には校長の力を入るようにしてあると。大学が一番問題でして、大学は教授会の下に何とか委員会というのがありまして、人事委員会が選抜するわけです。そして、規定では学長が一応推薦し、理事長が人事裁量権をすべて握っています。でも、一人しか上げてこなくて裁量権も何も…言えない状況で持ってくるわけだから(笑)。(「名ばかり」「そうですね」)そして大学の教授会というのはまさに…個人個人は仲が悪いのに、要は個人商店が集まっているようなもので、自分の権益を侵される場合はそろって文句を言うんだけれども、そうでない場合はお互いまあ仲良しなんです。…そもそも大学の先生は四六時中職員のように毎日いるわけではないですから。あまり何かを改革しようとしても役には立たないわけです。中高の先生との違いはそこがすごく大きいと思います。正式に研究日があって土日は休みで週4日ですから、授業はうちの場合は最低6コマを90分…
大谷 6コマを2日や3日でやってしまう先生も…
K・O そういうわがままは聞いちゃいますから。
大谷 基本的には週3日ですよね。そのあたりはK・Oさんの所と同じく恵泉も中高が先にあって、あとからできた大学ですから、微妙なところがあって、募集も中高の方が強い、大学の方が弱いという共通のところはあると思います。
森上 大学法人の8割でしたか中高法人が作ったと言われますね。中高法人なりの大学( ? )が圧倒的に多いらしいですね。みなさんが主流派なんです。
K・O でも、いつのまに…大学で大学紛争の頃に大学自治権ができたものだから、教授会の権限がえらく強いんですよ。だからなんでも教授会で決められちゃったりするわけですよね。カリキュラムについても大学の教授会がもう権限を持っちゃう、カリキュラムを握っているということはどういうコースの先生が必要かということは自分たちで決めるなんて…ありえないですよね。カリキュラムはまさに経営の中身ですから…。時代が変わればこういうトレンディな学科が必要だとか、コースを作らなければということが阻まれてしまいます。大学についてはそこを非常に大改革をしないと。
森上 まだ、中高のほうが守られているんでしょうね、大学は本当に厳しいですからね。
K・O 逆に言うと大学のほうが、変化している大学は…旧帝大は別として元の国立大学などは、統合・廃止されたり、補助金がどんどん減らされたりしていますから、非常に危機感を持って大改革をされていると思います。私学でも危機感を持ったところは大改革をしています。そうでないところが旧態依然で、中高が何とか金を出して(大学は)能天気…。
森上 中高のほうがお金持ちですか?
K・O それはもうぜんぜんうちは…だって定員に満たなかったら合わない、大学がだいたい毎年一億から二億の赤字ですから。大学法人は今年からHPで部門別(収支)もオープンにしています。
富本 小規模から中規模くらいの大学あたりは収支トントンか若干の赤字のレベルになっているところが多いです。
K・O 教授っていうと50、60ですから自分たちがあと何年だから、自分たちのいるまでは大丈夫だろうと、
富本 その話はすごく多いのです。「君の言うことはよくわかった。自分はあと一年で定年だから、次の者によく申し継ぐから、まあ急がないでいいよ」という言い方が多い。
K・O おっしゃる通りです。
富本 それはあちこちで体験します。「そうですか、わかりました……」となる(笑)。それで10年後に果たして同じ状態で存在していられるかは誰もわからないわけですから、やはりリスクは大きいと思います。
K・O (教授は)研究者ですからあるデータをうまく説明するとか、そういうのは得意ですから…また、弁の立つ人がいますし。
富本 やはりデータとして子供の数がどんどん減っているし、人口も減っているし、経済もいい時もあれば悪い時もあるわけで、経済は起伏があるとしても、人口というのはそう簡単に増える方向には転じない。そうすると中長期的には縮小傾向ということをある程度のスパンで考えざるを得ない。その時に例えば経常費益補助金が中高で平均30%からこれが25%になり、20%になった時にどういう対応をすべきなのか、納付金の値上は今まで3年1回だったのが今は6年に1回だとか、今まで5%だったのが3%しか上げられないというシミュレーションを、果たしてどれだけの法人さんがやってらっしゃるか、これらは可能性としてあり得るわけです。それを計算としてやればできるわけで、本当は事務職員などのスタッフがその辺をすべきだと思うのです。
K・O 私もそれは事務の仕事だと思います。
富本 事務職員が経営予測的なことを口にすると、5・6年前までは「そういうことは言いなさんな」と言われたことが多かったのですが、最近はほとんどなくなりました。やはり切羽詰まってきているからでしょう。
大谷 恵泉は代々学識経験者が理事長を務めてこられたんですが、2年くらい前に実業界から来られた方が理事長になりました。おっしゃる通りで、これは大きな転換でした。
富本 常勤ですか?
大谷 非常勤です。恵泉は常勤の学園長がおりますので、理事長は代々非常勤だったんです。
富本 プロテスタント系の学校は非常勤の理事長が多いように見受けます。カトリック系は中に修道院があって、理事長さんがそこから通ってくるということで、職住接近していている。プロテスタント系は学園長・学院長等の役職をおく場合が多いせいでしょうか。即断・即行していくご時世になってきて、判断のタイミングが遅れると致命的なケースというのがもっと増えてくると思うので、理事長の役割・責任は更に大きくなることでしょう。
5.事務職のあるべき方向
富本 いずれにしても事務職に限ると、基本的な職務分掌を明確にして、ひとつのポジションに少なくとも2人ずつはめ込んで、お互いに牽制関係におき、4・5年サイクルで各ポジションの異動をやれば基本的な経験を身につけられます。そこの担当者が一人休んでももう一人いるし、たまたま同一パートの2人とも休んだら、その時は他のポジションに経験者がいるわけですから十分カバーできるわけです。
あとはコンピュータの利用です。従前のシステムのまま電算化してもうまくいきませんから、それをきっかけに事務体制・仕組みを大幅に変えました。合理的な処理システムにするということは、コンピュータに乗せやすいということですから。現状のままでの電算化は困難です。「機械でできることは機械でする、アウトソーシングでやれることは外部に任せる」、そうすると2人ずつでも十分に対応ができる。そのうち余裕ができてきますと、保護者・教員をはじめ同窓会等に対しより厚い情報提供が可能となる。ただ、電算化には当然コストがかかりますから、“無駄遣いをする富本”と当時はよく言われました(笑)。結果は合理的になって、結果が良ければみなさん幸せになりますし・・。しかし当時は、電算化が進むとクビになるのではと事務職員は危惧していましたね。だから「生み出された果実の半分は学校にいただくけど、半分は毎日残業しなくて済むようにな形で還元する半から」と理解を求めました。また職務の見直しをやってみると、しなくてもいいことが結構あるのですね。まあ、仕事の整理には不安と抵抗はありますけどね。「何十年やってきた私からこの仕事を取る気か」、というように・・。
K・O 今日、お伺いしたかったのは、学校の建物管理やメンテナンスがありますよね。うちはそういうのは業者にボンと任せてやらせているんですが、学校専門の業者があるということでしたが…。
富本 野村ビルマネジメント㈱教育施設事業部ですね。
K・O そういう業者はゼネコンも持っていますしたくさんありますよね。
富本 知る範囲では教育施設セクションがあるのは野村だけですね。
K・O それなりのメリットはあるのですか?
富本 学校、特に私立学校という特殊な顧客を、大学から幼稚園までやってらっしゃるせいか対応が適切ですね。それから単価が比較的安いです。
富本 社風が穏やかなので私学の女子校向きかもしれません。
森上 いくつかの業者に持ち込んで二転三転した案件が最終的に野村さんに行きついて、教職員がやっと安堵の息をついたなんていうことがありますね。
大谷 そういう点では恵泉はすばらしい人に恵まれています。創立当初から発注することの多かった竹中工務店、ここの現場責任者がそのまま恵泉に来てくれているんです。派遣でも出向でもなく直接雇用です。現場で200人とか動かしていた人なんですが、どんな細かいことでも即、対応してくれています。職員として管材担当でいて、その下の用務とか警備とか営繕は別の会社に外注していますが、それらの業務もやってくれているので非常に助かっています。(学校業務は)扱う分野が非常に幅広いわけですね。人事と労務、財務のほか教務も入試もいろいろあります。私は恵泉にはもともと教務として入りまして、教務、入試、庶務などはやってきましたが、どちらかというと管材やIT関係には弱い部分があります。そこに専門家を導入するかたちになりまして、毎日朝7時半から夕方の5時くらいまで一級建築士がすぐ隣りにいるんです。これはかなり心強いです。そして総務課にはたまたま司法書士の資格を持っている者がいて、そういう意味では組織の中に専門家を抱え込んでいるという折衷した形になっていると思います。
富本 非常に恵まれたケースですね。
6.ガバナビリティ
大谷 これも大学法人であるために、職員が60人くらいいる中でということが大きいと思います。これが5人とか7人という規模であったら、そういう人を受け入れる余地があるかどうか…。恵泉はミッションスクールではなく日本人の創立者の教えを受けた人たちが80くらいでいますが、いわゆる一族経営ではないので、非常に恵まれていると思います。よその学校、特にオーナー系の学校を見ていると、これでは下の者が働きにくいのではと見えることがあります。家業としてやっている熱心さはわかるし、銀行や商社など他業種で経験を積んで戻ってくる人が学校運営に参加するということがありますが、職員のモチベーションを下げてはいないかと。東京都や中高協会などからのどんな文書も担当者に任せっぱなしにせず、理事長自ら目を通し、差配するなどの学校経営に対する情熱は非常に持っていると思いますが。
富本 発展段階においては、理事長さんが校長を兼務するということは時期的には必要な場合もあろうかと思います。しかし、長期にわたりそのままというのではなく、必要な時に必要な体制で臨むのが合理的だと思います。
理事長の職務は教職員の意欲を損なうことなく常に施策の調整が求められ、教育との兼務は負担だからです。
例えば給与体系ひとつとっても発展段階においては資質・意欲にばらつきが大きいですから、評価に基づく格差が必要です。しかし、安定期に入り質的に一定の幅に収まっている状態となったら、むしろ格差は障害となりかねない。そうすると発展段階の給与体系と成熟した段階のそれとでは同じであっては不合理だと思います。多くの事柄は流動的ですから、経営の決裁権者は成熟した段階において理事長と校長は分離した方が職務に専念し易いと思われます。
K・O そうだと思いますね。
大谷 幸いなことに恵泉には組合がないんです。ですから労使のことで悩むということは今のところありません。
K・O うらやましいですね。これが一番頭が痛いんです。
森上 恵泉はクェーカー教徒で教育基本法をつくるについては大変、功があった人たちなんですよね。民主主義の学校ですよね
大谷 富本先生が委員をやっておられる私学教育研究所の今度の法人管理部会では“民主主義を排して学校改革をやる”、いや“脱して”だったかな?ということだったので、非常に私は興味を持っているんですが。
富本 宮城県の学校で理事長兼校長をなさっている方の講演で、「脱民主化とサービス業としての学校改革」ですね。
大谷 富本先生のレポートの中でしたか、“過度の教育偏重を排す”というのがあったように思うんですが、
富本 教育至上主義?
大谷 そうそう。それでしたか。教育至上主義に陥るとまずいという部分がありましたね。
富本 「事務職員は教育がわからないくせに余計な事を口出すな」、「これを買えばいいのだ」、「業者へ金を払えばいいのだ」というケースも含めてね。
教育と経営のバランスをとって、どちらに偏ってもうまくない、という趣旨のことですね。
大谷 そういうことですか。
富本 結構、ありましたね。「事務職員は教育をわからないくせに、余計な発言をするな」ということは、若いころ日常的に言われていました。
大谷 この間のNPOのセミナーで立命館から和歌山大学に行かれた観光学部の先生を呼んで下さいましたね。その先生が国立大学に移ったところ、間接部門ばかりに職員がいる、総務とか経理とかに手厚く配置されていて、直接学生を支援する学生支援部門は配置が薄くて、教員と職員の関係が「一に学生、二に教員、三、四がなくて五に職員」みたいなことがまだ残っているということを言われていましたが、幸いに恵泉はそうではないんですが、一般的にはそのようにイメージしている人も多いでしょうし、そういう立場に置かれている人もまだまだいるのではという気もしますね。
K・O 国立大学の場合は職員は文科省の職員なんですね。人事異動があって学校を動くことになってしまう。だから基本的に学校へのロイヤリティはほとんどない、文科省の職員ですから大過なく過ごして、将来えらくなりたいと。そういう意味では国立大学の場合、教員のほうがいろいろ問題はあるにせよ、大学にロイヤリティを持っていて、職員は逆である、私はそういうイメージを持っているんですが。
大谷 私が大学に10年ほどいて感じたことは、恵泉をステップとして、もっと大きな、有名な大学に移る先生が何人もいるわけです。そういう先生は業績を持っていますから、それはそれでわかるんですが…私が発見した法則は、基本的に東大卒とお茶大卒(笑)、国立大学を出てその中で研究してきた先生は恵泉に就職しても、恵泉をひとつのステップとしてしか見ていないような気がします。そういう意味では、さきほどの職員の公募のところでも関係するんですが、卒業生が(教職員となり)後輩を見守り育てていくということは必要だと思うんです。恵泉はクリスチャンの卒業生がいたら、(優先的に)採用しようということはこれまでもあっただろうし、今後もあるかもしれない。同時に教員も業績だけではなく…立派な業績の先生には残念ながら逃げられるケースが今まであったので、そういう意味では、職員も含めてわが校に愛校心を持って欲しいと思いますね。それがなければ何のための私学か…大学も少子化で厳しい状況に置かれていまして、これをどうするかというところで、この間、大学の教員が非常にいいことを言いましてね。私は思わず感動してメモしたんですが、「存在として選ばれる潜在的価値を持つ学校でありたい」と。国立大学や早慶上智、G-MARCHに何人入学しましたという進学実績は毎年出しますし、そういう点が注目されやすいのですが、それだけでなく“存在として恵泉を選んでくれる人”が来てくれるとうれしいですし、そうあらねばと考えています。
今年、わが校のPRポイントがひとつできたんですが、それは中高一貫教育併設型です。神奈川の学校はほとんどの学校が申請していますが、東京の学校ではまだ文科省のHPに出ている学校は少ないです。なぜ都内で他校が申請しないかというと、“それは今自分たちがやっていることだからいちいち申請する必要なんてないんだ”と。それが(東京私立中高協会会長の)近藤先生たちの考え方だと思います。しかし、恵泉は事情があって申請し、今年の4月からそうなったんですが、その結果、できたカリキュラムでは中学校で「聖書」「情報」「園芸」を必修でおくことができました。「聖書」はキリスト教系の学校ではあるでしょうし、「園芸」もまたあると思いますが、「情報」を中学校で必修化することは現行のシステムでは不可能といいますか…情報の教員免許は高校にしかありませんので、難しいと思います。これは今年もっと大きく宣伝しなければと考えているところです。特設科目のような特色をはっきりと打ち出すことができて、学校の“存在”もまた打ち出すことができるのではないかと。
富本 中高一貫併設型にしたことで、私学の特色をより濃く仕組みに定着できたということですね。神奈川で中等教育学校がどんどん増えている理由というのは、例の未履修のカリキュラムの問題がおきたことで、主にフリーハンドの部分を広げたい点にあるようです。
森上 今、年々増えていますね。おっしゃるとおり自治体の締め付けが厳しいですから。東京とは違って、未履修の問題の余波で神奈川は指導・監督がより厳しくなりましたから。
K・O 恵泉では卒業生の教職員に占める割合はどれくらいですか?
大谷 どうでしょう、比率ではあまりはっきり把握していませんが…教員のほうはかなり高いですね。職員のほうはなるべく公募にするという形であまり増やさないようにしていますので、どんどん減っていくような部分がありますが。中高の教員は高いですね。大学の教員はほとんどいないです、まだ。
K・O 中高の先生がどんどん外に出ていくということは…
大谷 それはあまりないですね。
K・O やはり大学の先生に見られる傾向ですか。
大谷 そうですね。
7.今後の学校法人と事務職のあり方
富本 先に森上先生にお渡しした資料※1はかなり先駆的な内容で、今後はアウトソーシングを含めこういう形にせざるを得ないだろうというものです。今日お持ちした資料※2は現状を前提として、法人と学校事務とがあってそのなかでどういう課題があってどう取り組んだらよいのかというものです。この2つを学校さんに応じて使い分けてお渡ししています。どんどん変革したいので方向性を教えて欲しいという学校さんには先の資料で話をし、あとの資料は教員の世界と事務の世界は根本的に違うので、その違いを認識してお互いにうまく協力してやっていこうよというものです。
大谷 最初いただいたものはまだとてもうちでは…という内容で、スケールがある程度ないとなかなか高校法人ではまだ難しそうですね。
富本 教員は教科のいろいろな品物を買う時の執行権、予算は離したがらないです。ただ、それでは現実に不都合が生じるケースが多々ありますので、やはり通常、会社でも購買は一本ですから、やはりまとめてそこから発注をかける、具体的な要望があれば同等品を購買は買えばいいわけです。教員は既得権を離したがらない、そういう点で教科予算の大きい「体育科、理科、家庭科、芸術科」あたりで問題が起きてしまう。
大谷 私も資料でああそうかと思ったのは、体育系大学の先輩がスポーツ用品店を経営しているケースが多い、という話です。
富本 定期的にゴルフ大会や飲み会をやっているというケースもあるようです。人間関係で発注せざるを得ない背景があるわけです。
K・O 生徒がかわいそうですね、結果的に。
富本 親御さんは節約して教育に、ということで授業料を納めて下さっているわけですから、学校は「1円でも安く、より良いものを購入する」と考えるべきでしょうね。それともうひとつ、使い終わったらリサイクル、卒業生がおいていって下さるものは、買うのが難しい生徒へ引き継いたっていいわけですから。
大谷 それから“学校価格”というものを教えていただきました。知りませんでした。
富本 学校は価格交渉力が組織として弱い分野かもしれません。やはり保護者の立場でもう少し考えるべきでしょうね。そのためにはやはり教科との協議を回避するのはまずいです。多勢に無勢でしんどいですが。
K・O 私は理事長がバックアップして下さったので、代替品が4分の1くらいになりましたからね。特にIT関係は気をつけた方がいいです、(あの値つけは)わけわかんないですから。
森上 今日はどうもありがとうございました。
※1 座談会のためのブリーフィング資料
※2 同じく追加資料